表 紙 絵 と び ら


    1  無 題

米わ一作 冬ばわ山子よ
うつたが 田はたぬすまれた
家業
けえして お前どこ行ぐ
北のはずれの 花岡よ

春にやつつじも につこりさく
ドモ
百年このかた かなほりやよろけよ
たからうずまる その地のそこにゃ
骨がないてる カネのやま

いくさのたんびに ふくれてふえた

ハモニカ長屋と 山もちのサイフよ
おらにや地ごくの カネのやま



     2  金 く そ
地ごく まるで この山
山からあふれるカナくそ
カナくそでうずまつてゆく田んぼ
怒つた百姓がた むしろ旗おし立て
鉱山さ かけあつたこともあつた

ず 歌の文句でゆうならば

たんぼうずめた カナくそみた

うちの嬶も
山からすも ああとなく

死んだ田んぼを ながめていた

もえてくるぞえ
にえてくるぞえ はらわたが



      3  よ ろ け
なんぼカントクがぶつたたいたとて
「ぞうさん増産」のねんぶつとなえたとて
人のちからにや かぎりのあるものさ
合宿じや配きゆうのピンハネ
ろくろく食うものくわせねば
よろけるのわ あたりまえでね

まして娘
のうでさもかなわねえ
ひよわな商人
の人がたなおさらだべ



     は だ か の 娘
そのうえ なんぼ「くにのため」だとて
むりやりしょつぴいてきた娘
がた
あられもねえ姿で トロッコおし
へそまでだしたすつぱだか
小ぎれ一枚で前ばかくして

なんぼかはずかしく
なんぼか うらめしかつたべ
ドモ
はずかしいとて うらめしいとて
口にだせることでねえ
うしろにやカントクの六尺捧だ
もう
ハア おえらがた
人間なみのきもちでわ なかつたべ
モノ



    5  病 人 ま で も
からだわるくして うちで休んでいるものさ
ひつたてられて よろよろと
「軍の命れいだ」
「せい戦のためだ」
歯くいしばつて うらんでも
もうけることに 目のいろかえた
戦争商ばいのやつらにわ
蛙の つら
コサ 水だつたノス

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